草十郎のいない世界と「Blueray starbow」

 そのタイトルや「新生の鼓動よ響け。少女は今、青色はじまりの魔法を開く。」というキャッチコピーに表れているように、「魔法使いの夜」は一つの面において、蒼崎青子が魔法を使うまでの物語だと言えるだろう。

 九章「蒼崎家の事情」で「使えないし、使う気もないわよ、魔法なんて。」と語っていたように、青子は橙子とベオに敗北して自身の死を覚悟した時でさえ、魔法を使おうとはしなかった。そんな彼女が、十二章でついに魔法を使うことを決意する。
 その中で、青子は何のために魔法を使うことを決意したのか?という点には、いくつかの解釈をする余地があるように思える。

 自分の見たところでは多くの場合、青子は草十郎を救うため、魔法を使うことを決意したと理解されている。例えば『TYPE-MOONの軌跡』の著者である坂上秋成は、その本の中で青子が魔法を使うまでの流れを以下の様に要約している。

 その後、突如姿を現した青子の姉・橙子との戦いで、青子と有珠は瀕死の重傷を負います。ところが、そこに現れた草十郎は、単なる人間の身でありながら、自身を犠牲にして橙子の使い魔を撃退しました。
 それを見ていた青子は、さまざまな葛藤の果てに、草十郎を救うため、魔法を使うことを決意します。

坂上秋成『TYPE-MOONの軌跡』p.176

 この解釈が合っている可能性も十分あるだろう。
 けれど「魔法使いの夜」はシリーズとしては未完結ということで、*1不明瞭な部分が多く、とりわけ、魔法が使われる十二章ではその部分が多い。*2なので、違った解釈をする余地もあるように思える。
 そういう訳で、青子は橙子と決着をつけるため、魔法を使うことを決意したという解釈を軸にあれこれ書いていきたい。

青子は魔法で何をするつもりだったのか?

 まず始めに十二章内の魔法を使うまでの流れをざっくり振り返っておくと、草十郎の死後、橙子との会話を終えた青子は魔法のための「最後の工程」に入る。そして宇宙空間のような場所の描写が終わると、彼女はついに魔法を行使して旧校舎の広場を白い花園に変え、草十郎の死を未来に措くことで彼を助けて、自身を成長させる。

 その中で、「最後の工程」に入る前と後で青子の心境は変化しているように見える。

「最後の工程」に入る前と後の青子の変化

「最後の工程」に入る前

 「最後の工程」に入る前に、青子は草十郎を殺した橙子としばしの会話を交わして、以下の言葉をつぶやく。

「いいわよ、橙子」
 小さな、けれど叫びより確かな呟き。


「―――お望みどおり、本当の『魔法』を見せてあげる」

十二章「そして、青色の魔法」*3

 上記の言葉から「最後の工程」に入る前の時点で青子は魔法を使うことを決意していたと分かる。
 けれど、魔法を見せると言い放った青子だったが、橙子に看破されたように、まだ心の中には迷いや恐れが残っていた。

橙子の視線を受けて、青子はひとり自嘲した。
迷いは晴れない。
胸の恐れが消える事なんてきっとない。

 そして彼女は「最後の工程」へと身を投じる。

瞳を閉じて、彼女は最後の工程に身を投げた。

「最後の工程」に入った後

 しかし「最後の工程」に入り宇宙空間のような所の描写が終わると、青子は先程までは無かった激情を胸に抱いて、迷いを捨てさり、以下の様に独白して、草十郎の顔を思い浮かべる。

いま、私が指を動かす理由はたった一つ。つまり、なんていうか、口にするのもどうかと思うけど―――


私はこんなにも、コイツを助けたがってる……!!!!

迷いも憂いも捨てさった瞳で、魔法使いは世界を相手にペテンを始める。

 この一連のシーンの中で青子には、激情を抱いたり、迷いを捨てさったりといった心境の変化が起こっている。そしてその変化は、草十郎を助けたいと思ったことと結びついているように見える。
 つまり青子が魔法を使って草十郎を救うことを決意したのは、「最後の工程」に入った後でのことに思える。*4その場合、「最後の工程」に入る前に青子が魔法を使うことを決意したのは、草十郎を救うためではなく、橙子と決着をつけるため*5だと考えられるだろう。

 ではこの心境の変化を仮に正しいとして、その変化を引き起こしたように見える「最後の工程」の最中の出来事を見て行く。

「最後の工程」における複数の場面

 「最後の工程」は分からないことが非常に多いシーンだ。そもそも、青子が目をつぶると宇宙空間らしき所に場面がすっ飛ぶという始まりの時点で意味不明だ。けれど、その上で複数の視点から見た場面が並行して描かれているという仮定を軸に読み進めていく。

第一に現れる場面

 青子が「最後の工程」へと身を投じると、青子の一人称は「ワタシ」になる。また画面には青子が写っていないので、彼女の一人称視点になったと考えることができる。

 そして最初に現れる場面である、宇宙空間のような所に舞台が移る。文中の「彼女以外のすべてが途絶えた、果てのない星の運河」とはここのことだろう。
 そしてすぐに新たな場面がフラッシュバックように瞬く。

第二に現れる場面


 すると先ほどとは打って変わって、砂漠のような所が画面に映る。この第二に現れる場面では、主として赤い影が共にいるようだ。

青子はどこに向かっているのか?

 このシーンでは非常に多くのことが分からないと先に書いたけれど、その一つに相反しているように見えることが一緒に書かれているということがある。

 例えばこの場面では以下のような文章が書かれる。

今はゼロに向けて逆行する意識を、
         一つに統合しなくてはならない。

 「ゼロ」というのが何を指してるのかは不明瞭だけれど、この文章では青子は過去に逆行しているように感じられる。少なくとも「逆行」という言葉からは未来に向かって進んでいる感じはしない。けれど、しばらく後に以下のような文章が現れる。

未来まえを目指す足が止まる。

 当たり前だが、未来を目指す足を止めるためには、それまで未来を目指して歩いていなければならない。なので、こちらでは彼女はそれまで未来を目指して進んでいたと読める。
 結局、この青子はゼロに向かって逆行してるのか、未来を目指して進んでるのかどちらなのだろうか?

 この疑問に対して複数の視点から見た場面が並行して描かれていると考えると一つ説明を与えることができる。つまり、彼女はある視点ではゼロに向かって逆行していて、別の視点では未来に向かって進んでいるという訳だ。
 もし青子が赤い影に出会って殺されるなら、それは未来でのことだと考えるのが自然だろう。*6なので仮に、宇宙空間のような第一の場面をゼロに向かって逆行する視点、赤い影のいる第二の場面を未来に向かって進む視点だと考えて先に進む。

 さてそうしていると、彼女は不意にもう一つの視点から新しい記憶を見る。

第三に現れる場面

不意に、
   新しい記憶を見た。


他者を媒介にして  を交換しようとした結果だろう。
ワタシは、聞いた事もないクセに、慣れ親しんだその音を聴く。


 第三の場面として、上記の画像と文章が瞬くように現れる。
 この山の景色は、十三章で後悔は無くしていく為にあると青子に言われた時に、草十郎が思い出すものと構図がほとんど同じだ。

*7
 また、「こんな物が過去だって言うの、アンタは」という青子のセリフもある事から、ここで彼女が見た「新しい記憶」は草十郎の過去だと考えることができる。

 そして(おそらくは)その記憶からの、赤字で書かれている音を聞いていた青子は思いつきで「航路みち」を変える。

未来まえを目指す足が止まる。


ワタシは思いつきで航路みちを変える。

 先に書いた青子の心境の変化は、まさにこの出来事によって引き起こされているように思える。
 そして、もしこの「思いつきで航路みちを変える」事こそが草十郎を救う事だと解釈するなら、青子は「最後の工程」で草十郎の過去を見るまでは、彼を救おうとは思っていなかったことになる。つまり、彼女に草十郎を救うことを決意させた直接のきっかけは、彼の死ではなく彼の過去になるはずだ。
 そしてその事は同時に「思いつきで航路みちを変える」前の、草十郎を助けなかった未来があったことを示唆する。

 その未来がどのようなものなのかは、様々に考えることができるだろう。*8その上でこの記事では、蒼崎青子が「本当の『魔法』を見せてあげる」と言ったからには、たとえ恐れや迷いを抱いていたとしても、彼女は魔法を使うことができたのだと考えて話を進める。言い換えるなら、それは橙子を倒すためだけに魔法を使った未来だ。

 さて、ここで少し脇道にそれるけれど、仮にこの考えが正しいとすると一つ疑問が湧いてくる。
 それは魔法で成長した青子が過ごした未来の十年間に、草十郎はいたのか?ということだ。(以下では、十年分の成長をして、橙子を圧倒した赤い髪の青子を大人青子と書く)

大人青子の過ごした十年間に草十郎はいたのか?

 そもそもどうしてこのような疑問が浮かぶのかというと、大人青子が作中の世界(=草十郎を助けた世界)で十年間を過ごした青子だとすると、橙子を殺そうとしたことが少し奇妙に思えるからだ。つまり、もしその世界で成長した青子なら、旧校舎の決戦後でも橙子が生存していると知っていることになる。それを踏まえた上でなお、橙子を殺すことができると考えていたのだろうか?

 この疑問に対して、大人青子は草十郎を助けなかった世界で成長したのだとすると、一つ説明を与えることができる。というのもゲーム本編では草十郎の介入によって命を救われる橙子の生死は、彼の生死と一致しているように見えるからだ。

 つまり、もし仮に草十郎を助けなかった世界があるとするなら、橙子は旧校舎の決戦で殺されていたように思える。そしてその橙子のいない世界で十年の時を過ごした青子なら、彼女を殺せると思うのも自然だろうという訳だ。

 とはいえ、結局のところ青子の魔法については良く分かっていないし、橙子が生存することを知った上でなお殺せると思うのも考えられない訳では無い。またこちらの考えを取ることで生まれる新たな疑問もある。*9ただ、可能性の一つくらいには言えるのかもしれない。

 さて、それでは話を「最後の工程」へと戻そう。

十二章と「Blueray starbow」の違い

 ここで、このゲームの総監督である奈須きのこが「ある意味、物語設定のネタバレになっている」と述べる曲を引用したい。それはゲームで使用された楽曲のアレンジ集「魔法使いの夜 Original Soundtrack Repetition」の10曲目に収録されている「Blueray starbow」という曲だ。

奈須 (中略)一方、最後の10曲目のメドレーだけは追体験とはちょっと違う。他のメドレーは物語の流れとリンクしていますが、10曲めだけは構成を変えて貰いました。詳しくは言えないけれど、ある意味、物語設定のネタバレになっている。あの時、裏側ではこういう事があったんですよ……と深澤さんに説明した結果、出来上がったのがこの曲なんです。

魔法使いの夜 Original Soundtrack Repetition」ブックレット

 「Blueray starbow」は、ゲーム本編で使用されている「金狼/ELEMENTS」「imbalance/blue」「First star」の三曲からなるメドレー曲だ。そのうち「金狼/ELEMENTS」は草十郎対ベオ戦で、「First star」は大人青子対橙子戦でのみ使われていることから、この曲は十二章を表現していると考えられる。

 実はこの曲には本編とは異なっていると指摘できる点が少なくとも一つある。それは曲順だ。
 ゲーム本編の十二章では、上記の三曲は以下の順番で流れる。*10

「金狼/ELEMENTS」→「imbalance/blue」→「First star」
 けれど、「Blueray starbow」では以下の順番で曲が使われる。*11
「金狼/ELEMENTS」→「First star」→「imbalance/blue」→「First star」
 上記のように「imbalance/blue」の前に「First star」が挿入されている点が異なってると言うことができる。「imbalance/blue」は魔法を使う前の「最後の工程」の時に流れる曲なので、魔法を使った後の曲である「First star」がそれより先に流れて、分割される形で二度使われているのは一つ大きな違いに思える。*12

 もちろん、これが構成を変えた所なのかは定かではないし、仮にそうだったとしても、どのような意図でそうしたのかは分からない。
 その上で「Blueray starbow」をこれまでの解釈に当てはめて考えていく。

草十郎のいない世界と「Blueray starbow」

 ここまで、橙子と決着をつけるために魔法を使うことを決意した青子が、「最後の工程」の中でゼロに向かって逆行するのと同時に未来を目指して進み、草十郎の過去を見たことで彼を救おうと決意して「航路みち」を変えたと考えてきた。

 そうだとするなら、草十郎の過去を見るまでの青子が「最後の工程」の中で目指していた未来は、まだ彼女が「航路みち」を変える前の、草十郎を助けなかった未来ということになる。

 そんな本来の未来と言える草十郎のいない世界であったとしても、後悔は無くしていく為にあると言い切り、過去を美しくするために生きている青子なら、凛々しく胸を張って生きてみせるはずだ。*13その「最後の工程」の中での未来への歩みが、「Blueray starbow」の一度目の「First star」によって表現されているとここでは考える。

 しかし、「imbalance/blue」の流れる「最後の工程」の中で草十郎の過去を見た青子は、彼のいる未来を選ぶ。つまり、ゲーム本編で描かれている草十郎を助けた世界は、ある意味において、青子にとって二度目の未来になる。*14その未来を、二度目の「First star」が表現していると解釈しよう。
 そうすると一度目と二度目の「First star」の違いに意味を見出すことができる。そしてそれは「First star」と、そのアレンジ元である「蒼崎青子」の違いに繋がっていく。

蒼崎青子」と「First star」

 一章で「極めて自己中心的な気質でありながら、努めて公正でいようとする」と評されたように、蒼崎青子は相反するように見える性質を兼ね備えている人物だ。
 彼女は直情的でありながらどこか自身を俯瞰していて、外向的で人と関わることを厭わないのに、自分の感情を乱す相手が敵だと断言する。そして、それまでの全てを捨てて違う生き物として生きる選択をしたようで、どこまでも自分を貫いている。

 青子のテーマ曲である「蒼崎青子」を聴いていると、彼女のそうした姿がこの曲に重なる時がある。冗談交じりに「メドレーみたいになった(笑)」*15と語られているこの曲は次々と表情を変えながらも、その繰り返し奏でられる旋律の中に、彼女の抑圧的なまでの自己の強さを感じさせるからだ。

 そんな「蒼崎青子」と、その後半部のアレンジ曲である「First star」で、一か所メロディーが大きく異なる所がある。それは「First star」の2分02秒~52秒ほどまでの、この曲のサビと言える所だ。その箇所では、「蒼崎青子」で奏でられる、いわば彼女の旋律と言えるメロディーを離れ、まるで何かから解放されたかのように高らかに歌い上げる。

 そしてそのメロディーの違いは、「Blueray starbow」の中の一度目と二度目の「First star」の違いにそのまま当てはまる。一度目の「First star」では「蒼崎青子」の旋律だけが奏でられるのに対して、二度目の「First star」ではその彼女とは異なる旋律が奏でられるからだ。

 先ほど二度目の「First star」は草十郎のいる未来を選んだことを表現していると解釈した。そしてその世界で彼の過去を取り込んだ青子は、生まれて初めて自分の意志を他人に曲げられることになる。

「他人の記憶を取り込んだ代償か。引きずられたな、青子」
「そうよ。自分の意志を他人に曲げられるのが、こんなに悔しいなんて、知らなかった」

 これまでの考えに従えば、青子が魔法を使った元々の目的は橙子との決着をつけることだった。しかし、彼女は自分を曲げて橙子を見逃すことを選ぶ。
 つまり、青子は草十郎の過去に触れて彼を助けたことで、自分一人では決して選ぶことのなかった新しい未来を歩いていく。
 もしかしたら、「First star」の中の「蒼崎青子」とは異なる旋律は、そんな彼女の姿に重ねることができるのかもしれない。

終わりに

 総監督を務めた奈須きのこの口から「続きはあります」*16と語られている「魔法使いの夜」の続編を求める声には、二つの意味があるように思える。
 一つは、「魔法使いの夜」の続きの物語が見たいという意味だ。久遠寺邸の三人や、彼らの友人や、教会組やベオやリデルたちの織りなすその後の物語が見たいから、続編を求めている。
 そしてもう一つは、「魔法使いの夜」に残されている多くの謎が明かされて欲しいという意味だ。例えば、作中で大きな役割を果たす、「人殺しは、いけない事だ」という言葉にまつわる草十郎の過去や、青子の魔法について詳細は明かされずに終わる。そうした謎が明かされることを期待して、続編を求めている。

 前者の、その後の物語が見たいという声は、続編が出ることでしか解決されないだろう。しかしひょっとしたら後者は違うのかもしれない。なぜなら、メディア展開などで物語が新しく語り直される際に、全てとは言わないまでも幾つかの新しい事実が明かされるということはあり得るからだ。
 そしてその明かされた事実によって、これまでの自分の解釈が否定されるということもあるかもしれない。もちろん、それは何ら悪いことではないけれど、何だか惜しい気持ちもある。
 そういう訳でこの記事を書いた。もし、映画でこの解釈が誤りだと分かっても、どこか懐かしい気持ちで読み返せたら良いなと思う。

*1:「10年経ったいまも全三部作あるとされる物語の続きをユーザーの皆さんに一向にお届けできていないところにずっと気持ちが囚われていて......。」(https://www.famitsu.com/news/202301/06286601.html)

*2:例えば魔法の正体とは何か?・あの宇宙空間らしき所は何か?、そしてあの場所では何が起こっていたのか?・草十郎が目覚めた直後に思い出した女の人は誰か?・「人殺しはいけないことだ」という言葉にまつわる草十郎の過去とは何か?など。

*3:以下、引用した文章や画像に出典が無い場合は十二章「そして、青色の魔法」から引用している。

*4:これに対して、青子は元々草十郎を救おうと思っていたが、「最後の工程」での出来事によってさらに一層その思いを強くしたという解釈もできるだろう。その場合、後述の「航路みちを変える」事は、草十郎を救う事では無いと考えることになる。

*5:より具体的に書くと、橙子との決着が後日に引き伸ばされて草十郎の死が無駄になってしまわないように、この場で決着をつけようとして魔法を使うことを決意したと考えられるだろう。

*6:「新たに魔法を宿したものは、その赤い影に殺される。」(十二章「そして、青色の魔法」)ただし、どう見ても赤い影は超常的な存在なので、過去に現れるという可能性もなくはない。また、そもそもこれらの場面は現実の世界を反映させたものではなく、精神的なものだと考えることもできるだろう。

*7:画像は十三章「帰り道」から。モノクロになっていたり、角度が微妙に違ったりしていてちょっと割り辛いかもしれないけれど、左側の特徴的な山のシルエットなどに注目して見比べると、ほぼ同じ背景になっていることが分かる。(参考gif)ただし、おそらくどちらも同じ一枚の背景CGから別々に作られているものなので、ぴったり重なる訳では無い。

*8:例えば、青子が魔法を使えなかった未来と考えることもできるし、「本当の『魔法』」は使わなかった未来とも考えられる。

*9:例えばもし未来が変わってしまったのなら、この大人青子はこの後どうなるの?など

*10:他の曲を省略しないで書くと「金狼/ELEMENTS」→「夜への誘い」→「窮地/omen」→「夜への誘い」→「innocence」→「imbalance/blue」→「Five」→「nostalgia」→「遠い疵」→「First star」という順番で曲が流れる。

*11:曲の切り替わる時間を省略しないで書くと「金狼/ELEMENTS」(00:00~01:48)→「First star」(~03:36)→「imbalance/blue」(~04:31)→「First star」となる。

*12:ただし同アルバム内のメドレー曲であっても曲順が異なる曲は他にもある。例えば「stranger in lost world」では「Judicare tibi」→「鏡の国の騒動」の順番で曲が流れるが、これはゲームとは異なっている。

*13:十三章で語られたような、今を懸命に生きることで後悔を無くし過去を美しくするという青子のひたむきな生き方と、魔法で過ぎ去った出来事に直接干渉して草十郎を救うという十二章での行動は噛み合ってないように思える。彼女のその生き方から言えば、草十郎の死も無くしていく為にある後悔として受け入れ、前を向いて生きていく方が理屈としては合っているはずだ。そうした意味でも、草十郎を助けたことは彼女にとって思いがけない行動だったように見える。

*14:「ある意味において」というのは、「最後の工程」の中の一人称が「ワタシ」の青子と、そうでない青子を同一視する訳では無いからだ。

*15:魔法使いの夜 オリジナルサウンドトラック」ブックレット

*16:「奈須氏:続きはあります。もちろん今回の第1部だけでもひとつのジュブナイル作品として完結していますが,中には「?」と首をかしげる部分もある。」(https://www.4gamer.net/games/115/G011514/20120511075/index_4.html) しかし、後半の「第1部だけでもひとつのジュブナイル作品として完結しています」という部分に関してはそうは思わない。なぜなら、草十郎の過去や、青子の魔法についての事情が分からずじまいになっているせいで、十二章後半を代表とした物語の重要な場面が判然としないものになっているからだ。たしかにTYPE-MOON作品では物語の周辺的な設定が詳しく語られないということは珍しくない。しかし「魔法使いの夜」では、それにとどまらず作品の主題となっているような主人公たちの事情や設定すらも語られておらず、十二章で青子が魔法を使ったり、十三章で草十郎が過去に別れを告げたりといった重要な場面でさえも彼らの心情を想像するのが難しく、その内容を理解するのが困難になっている。そのような重大な不足のある作品は、ジュブナイル作品として見ても単体で完結しているとは思えない。