「天久鷹央」シリーズの小鳥遊優に恋人はいたのか?

 最近「天久鷹央」シリーズをよく読み返している。

 作者である知念実希人が「このキャラクターのモデルは完全にシャーロック・ホームズですね」*1 と言うように、ホームズ役である天久鷹央と、ワトソン役の小鳥遊優が活躍する医療ミステリーで、鷹央の「個性」がステレオタイプに描かれ過ぎていないかという嫌いは感じるものの、装画がいとうのいぢということもあって、ハルヒに近い楽しみ方をしている。

 それはさておき読んでいて疑問に思った小鳥遊優の恋人について書いていく。

小鳥遊優の恋人

 シリーズ4作目*2 にして作中時間では始まりにあたる、天久鷹央と小鳥遊優の最初の事件を描いた『スフィアの死天使 天久鷹央の事件カルテ』において、着けていたネクタイを元に天久鷹央に一年以内に彼女と別れただろ?と推測された小鳥遊優は自身の恋愛遍歴について以下のように独白している。

すべて鷹央の言う通りだった。去年このネクタイをプレゼントしてくれた恋人とは、今年の初めに別れている。

『スフィアの死天使 天久鷹央の事件カルテ』P24

 このやりとりは7月のこと*3 なので、この時点では恋人と別れてから最長で7か月ほど経っている計算になる。

 さて、そこからシリーズ1作目である『天久鷹央の推理カルテ』に収録されている「人魂の原料」では、『スフィアの死天使 天久鷹央の事件カルテ』から4か月ほど作中時間が経っている*4 けれど、そこで小鳥遊優はこのようなことを独白している。

残念ながらこの数年、恋人はいなかった。この病院に赴任する前、大学病院に勤めていた頃は、毎日の勤務が忙しすぎてそんな余裕はなかったし、この天医会総合病院に来てからは、旺盛な好奇心にまかせてわけの分からない事件に首を突っ込みまくる上司に振り回され、これまた恋人を作る余裕などなかった。

天久鷹央の推理カルテ』P68

 最初に引用した方を信じるならば、小鳥遊優は恋人と別れて1年経つか経たないかというくらいのはずである。にもかかわらず「この数年、恋人はいなかった」と言うのは端的に矛盾しているように読める。

 もし仮にこれが作者や編集側のミスによって起こったことだとすると、今現在の設定で小鳥遊優に恋人はいたことになっているのかいないのか。個人的には元カレ再登場とか読んでみたいのでいた方が嬉しいけれど。*5

*1:http://hon-tube.com/pc/movie.php?movieid=1681

*2:前述のインタビュー動画で語られているように執筆順では1作目

*3:「去年の七月に僕が出向してくるまで、統括診断部はまともに機能していなかったのだ。」『火焔の凶器 天久鷹央の事件カルテ』P267

*4:天久鷹央の推理カルテ』の最初に収録されている「泡」は小鳥遊優が天医会総合病院に赴任してから4か月後の話(P17)で、「人魂の原料」は同じ月の話(P70)

*5:この記事に直接は関係ないけれど、この掌編を読むと学生時代の恋人については同じ作者の「リアルフェイス」に登場する朝霧明日香とそのような関係にあったようだ