そのタイトルや「新生の鼓動よ響け。少女は今、
九章「蒼崎家の事情」で「使えないし、使う気もないわよ、魔法なんて。」と語っていたように、青子は橙子とベオに敗北して自身の死を覚悟した時でさえ、魔法を使おうとはしなかった。そんな彼女が、十二章でついに魔法を使うことを決意する。
その中で、青子は何のために魔法を使うことを決意したのか?という点には、いくつかの解釈をする余地があるように思える。
自分の見たところでは多くの場合、青子は草十郎を救うため、魔法を使うことを決意したと理解されている。例えば『TYPE-MOONの軌跡』の著者である坂上秋成は、その本の中で青子が魔法を使うまでの流れを以下の様に要約している。
その後、突如姿を現した青子の姉・橙子との戦いで、青子と有珠は瀕死の重傷を負います。ところが、そこに現れた草十郎は、単なる人間の身でありながら、自身を犠牲にして橙子の使い魔を撃退しました。
それを見ていた青子は、さまざまな葛藤の果てに、草十郎を救うため、魔法を使うことを決意します。
この解釈が合っている可能性も十分あるだろう。
けれど「魔法使いの夜」はシリーズとしては未完結ということで、*1不明瞭な部分が多く、とりわけ、魔法が使われる十二章ではその部分が多い。*2なので、違った解釈をする余地もあるように思える。
そういう訳で、青子は橙子と決着をつけるため、魔法を使うことを決意したという解釈を軸にあれこれ書いていきたい。
*1:「10年経ったいまも全三部作あるとされる物語の続きをユーザーの皆さんに一向にお届けできていないところにずっと気持ちが囚われていて......。」(https://www.famitsu.com/news/202301/06286601.html)
*2:例えば魔法の正体とは何か?・あの宇宙空間らしき所は何か?、そしてあの場所では何が起こっていたのか?・草十郎が目覚めた直後に思い出した女の人は誰か?・「人殺しはいけないことだ」という言葉にまつわる草十郎の過去とは何か?など。